不思議なオジサンの話1

子供の頃、私の家に時々出入りしていたオジサンがいました。

身なりの良いスーツ姿に黒渕眼鏡、髪型は七三分けだったと記憶しています。
年齢は、私が小学低学年の頃で50歳代だった様に思います。

35~38年前なので、今現在生きておられたら80~90歳くらいかな。

母は子供3人を抱え離婚し、小さな商店で店番の仕事をしていました。
その時、店にオジサンが立ち寄ったのが、初めての出会いだったそうです。

オジサンが会計の時、店番をしていた母の顔をじーっと見て「あんた、酒と煙草が好きな人だね~」と言った事が図星で、この人はどういう人なんだ?と興味が湧き、近しくなったとの事でした。

母は離婚してから、酒と煙草を覚えたそうです。

オジサンは人相を見る鑑定士という肩書きでした(2020/1・母に確認済)
オジサンは来る度、私達兄弟3人に袋で小分けされたチョコレート等のお菓子を持ってきてくれました。

子供ですから、嬉しかったという記憶があります。

気になった事は、オジサンが乗って来るセダンの乗用車の助手席に、いつも女性が座っていた事です。

髪の毛を一本に結んだ細めの女性で、下を向きっぱなしだったので、顔もよく見た事が有りませんでした。

車から降りてくる事は無く、路上駐車をしている道端で私達子供が遊んでいても、私達を見る事も目を合わせる事も無く、暗いイメージでした。
眠っていたのかも知れません。

あの女性は誰だったのか、未だに謎だし、母に聞いても「知らない」と言います。

※母は思い出したと言っていましたが、やはり車から絶対に降りては来なかったという記憶は一致していました(2022/03/19確認)

オジサンは母に「あんた、昭和55年に好きな人が出来て結婚するよ」と言ったそうです。

離婚の痛手も有り、もう結婚など二度としたくないという心境だったので否定したらしいのですが、母は昭和55年、私が小学校2年生の時に付き合いだした男性と、3年後の昭和58年に籍を入れました。

再婚してから直ぐに、数年音沙汰が無かったオジサンが「元気かい?」と、ひょっこり現れたので、母は再婚した事を報告したそうなのですが、オジサンは「あんたね、もう一度新婚を味わうよ」と言ったそうです。

再婚したばかりなのに何て事を言うんだ!と、母は思ったそうです。

オジサンは「健康面か女性問題のどちらかで離婚する」と母に言ったそうなのですが、信じたくは無かったそうです。

その4年後、2番目の旦那(義父)は浮気をし、姿を眩ましました。

残ったのはマイホームのローンです。

蒸発してしまったので離婚も出来ない、借金の取り立ては来るしで家計が火の車になってしまった所に、その事を小耳に挟み「俺で良かったら助けるが」と言ってくれたのが、今現在の旦那(義父)です。

母とは幼馴染みでした。
若い頃に結婚したけれど、子供を授かる前に奥さんが亡くなり、それからはずっと独り身だったそうです。

オジサンと母が話し込んでいると、家の前を中学生の従兄弟が歩いていたので、母がオジサンに「あの子は私の兄の子供だよ」と話したら、オジサンが「あの子はね、大人になったら親の手の届かない遠い所に行ってしまうよ」と言ったので、母は、遠い所=死と思い、兄夫婦には口が避けても言えないと思っていたのですが、その従兄弟は大学を卒業したのち仕事でフランスに行く事になり、そのままフランスで結婚し子供を作りました。
親の手の届かない遠い所とは、フランスの事でした。

オジサンは、私達兄弟の未来も母に言っていたそうで、兄の事は「目の前に大きな大きな壁が有るけれど、それを突き破って前に進まなければならない」、弟の事は「大人になったら呑兵衛になるから酒には気をつける様に」との事でした。

兄は20代を過ぎた頃、脳下垂体に先天性の異常がある事が分かり、それは日本でも数少ない難病でした。
数少ないが故に癌やエイズの様に研究する科学者も少なく、未だに原因不明だそうです。
難病を抱えつつも今、頑張って生きています。

弟は数年前キャバクラにハマってしまい、そこで知り合った女性に、人生をひっくり返されるくらいの酷い目に遭ってしまいました。
今は軌道修正が出来たけれど、あれは人生最大の俺の汚点だったと孟反省しています。

目の前に大きな壁、酒には気を付けろ、、、。

当たっていますね。

私の事はというと「何の心配も要らないが、結婚は早めにする様に」という事でした。

母にそれを聞いたのは小学校高学年か中学生の頃ですが、「えー!それだけ?何の心配も無いわけ無いじゃん、本当の事を言ってよ!」と母に食い下がったのですが「本当にそれだけだよ、なーんにも心配いらないってさー」と母は笑って言っていて、それが俄に信じられませんでした。